ストレスや苦しみの心理学的メカニズムと対処法 Part.2

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一般社団法人日本経営心理士協会代表理事の藤田です。

転職活動や就職活動をする上では面接を受けたり、慣れない新たな職場で働いたりするため、ストレスや苦しみを感じる場面は多々あります。
そういった場面において、ストレスや苦しみとどのように向き合うかは転職活動、就職活動に大きく影響します。そのために重要な、ストレスや苦しみに対する向き合い方については前回お話ししました。

今回は不安の心理的メカニズムと対処法についてお話ししていきます。 
(写真素材:iStock.com/pixelfit)
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藤田耕司(ふじた こうじ) 氏
(社)日本経営心理士協会代表理事、経営心理士、公認会計士、税理士
年商300億円超の企業から個人事業主まで、のべ1,200件以上の経営相談を受け、労務問題から営業、マーケティングなど、幅広い分野で人間心理と数字の両面から経営改善を行う。
その経営相談事例を基に、ビジネスで成功を再現し、失敗を回避する手法を経営心理学として体系化することで経営指導の成果を大きく高める。

また、経営心理学を体系的に学び、「経営心理士」の資格を取得するための経営心理士講座を実施。その講座の成果が口コミで広がり、日経新聞をはじめ複数のメディアから取材を受ける。金融庁や一般企業、税理士会等の士業団体などでの研修活動も行い、年間の講演回数は250回を超える。

◆藤田講師の詳細なプロフィール
◆藤田講師が担当している『LEC 経営心理士プレセミナー』
https://www.lec-jp.com/keieishinri/

不安が生じるメカニズム

転職活動や就職活動においては面接を受けたり、初めての職場で働いたりと、不安を伴う場面が多くなります。この不安とどう向き合うかで、転職活動や就職活動におけるストレスは大きく変わります。

不安は、未来において緊張や焦りなどが生じるおそれがあり、具体的な展開が十分にイメージできておらず、対応策も覚悟も決まっていない状況において生じる感情です。

例えば、明日、面接があるので不安で眠れないという場合を例に考えてみましょう。

明日の面接で緊張してガチガチになったらどうしよう、それで上手く話せなかったらどうしよう、想定外の質問をされたらどうしよう、それで面接が終わってがっかりしたらどうしよう…

こんなことを想うと不安が生じ、不安は頭の中を暴れまわります。

そして、不安は、「不安になってはいけない、考えるのはやめよう、不安から逃げよう」と思えば思うほどしつこく頭の中に現れ、なかなか消えてくれないものです。そのため、不安を解消するためには、不安から逃げるのではなく、むしろ不安と向き合う方が効果的だったりします。 
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未来の状況を明確にする

では、どのように不安と向き合えばよいのでしょうか。

不安は未来の状況が不明確で、具体的なイメージができていない場合に生じやすいという性質を持っています。そのため不安を抑えるためには、まず不安を感じる場面において想定される状況をできるだけ明確にしていくことが重要になります。

面接であればどういった質問をされるかについて考え、できるだけ多く想定される質問を書き出していきます。想定される質問が思い浮かばなければ、インターネットや書籍で、面接で聞かれやすい質問について調べ、参考にするとよいでしょう。未来の状況を明確にしていくうえでは、こういった情報収集はとても重要な手段です。

会場に下見に行くのも良い方法です。面接会場となる会議室までは入れなくても、会場のビルや会場までの道のりを見ておくことで面接当日の状況がより具体的にイメージできるようになります。 

想定される状況に対する対応策を考える

想定される状況がある程度明確になったら、次にその状況に対応するための具体的な対応策を考えます。未来の状況は明確になっても、その状況に対してどう対応すればいいかが分からなかったり、どう対応するかが決まっていなかったりすると、不安は依然として消えることはありません。

つまり、想定される未来の状況と、その状況にどう対応するかが明確になると、不安は和らいでいきます。

面接であれば想定される質問のそれぞれに対して、どう答えるかを考え、その内容を言葉にまとめていきます。「こう質問されたら、こう答えればいい。こんな質問をされたら、こう答えればいい」と想定される質問に対して、的確に答えられるイメージができるようになれば、不安は徐々に解消されていきます。

こういった対応策を考える際には、先輩や友人、家族に相談することも効果的な方法です。なるべく多くの人から意見を聞き、インターネットや書籍でも回答例を集め、情報収集しましょう。それによって対応策に自信が持てるようになればなるほど、不安は解消されやすくなります。  
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うまくいかない場合の覚悟を決める

未来の状況と対応策が明確になれば、多くの場合、不安は和らいでいきます。ただ、それでも依然として不安が残る場合もあります。

それは万が一想定外の状況が起きた時、それを受け入れる覚悟が決まっていない場合です。

未来の状況を明確にし、そのための対応策をとったとしても、結果としてうまくいかない場合もあります。「うまくいかないのは嫌だ!絶対にうまくいかなければいけない!」と思うほど、不安は強くなっていきます。不安が強くなるほど高いパフォーマンスを発揮するのが難しくなり、余計にうまくいかなくなる可能性が高くなります。

そのため、うまくいく可能性を高めるためにも、まずは不安を和らげることが重要であり、そのためには「うまくいかないのは嫌だ!絶対にうまくいかなければいけない!」という考えは持たない方がいいでしょう。それはつまり、うまくいかなかった場合でもその状況を受け入れる覚悟を決めるということです。 

どのように覚悟を決めるか

ただ、覚悟を決めるといっても、どう覚悟を決めればいいのか分からない方も多いでしょう。そこで覚悟の決め方についてもお話ししたいと思います。

それはうまくいかなかった場合に対する意味付けを変えるという方法です。

意味付けを変える方法については、この連載の前回の記事「ストレスや苦しみの心理学的メカニズムと対処法 Part.1」で詳しく書いていますので、詳細はそちらの記事を参照していただければと思いますが、ここでもポイントだけお話ししたいと思います。

例えば、面接でうまくいかなかった場合というのは、不採用になるということです。不採用という結果を受け入れるのは、今の時点ではとてもつらいことかもしれません。何としてでもその企業で働きたいと思っていれば、なおさらつらいでしょう。

ただ、当初行きたいと思っていた企業に就職した場合の人生と、その企業ではない企業に就職した場合の人生とを比べた場合、人生全体という大きな視点で見れば後者の方が幸せな人生を送れたりすることもあります。 

面接で落とされた結果、今がある

私は公認会計士として監査法人で働いていましたが、2011年に退職し、その際に転職活動をしたことがあります。当時、ここで働いてみたいという企業があり、その企業の採用面接を受けました。ある程度のところまでは進んだのですが、最終面接で落とされました。ショックでした。

その後、特に働いてみたい転職先が見付からず、消去法的に独立の道を選びました。そして今の自分があります。

今から思えば、あの時、面接で落とされて本当に良かったと思っています。当時は独立のイメージがわかなかったので転職活動をしましたが、いざ独立してみると、自分で事業を展開することが楽しく、自らの可能性を大きく伸ばすことができました。

面接に落ちるということに対して、当時は「最悪だ。ショックだ」とネガティブな意味付けをしていましたが、今は「本当に良かった」とポジティブな意味付けをしています。

この経験から、物事の結果に対する本当の意味は後になってみないと分からない、今はその結果の本当の意味は分からないという考えを強く持つようになりました。  
分かれ道

最大のパフォーマンスを発揮し、ベストを尽くすために

私の知り合いは第一志望の有名企業に受かり、大喜びでその企業に就職しました。ところがその企業では若手のうちはいくら実力があっても初歩的な仕事しかさせてもらえず、ここにいては自分の成長はないと思い、彼は2年足らずでその企業を辞めました。

その後、彼は中小企業に転職にします。
その企業では実力があればどんどん大きな仕事を任せてくれたので、彼は若くして大きな仕事を任せてもらえるようになり、今では活き活きと働いています。

このように今、自分が行きたいと思っている企業は人生全体という視点で見てみれば、必ずしも最適な選択肢とは限らない可能性もあります。

そのため、「絶対に面接で落とされるのは嫌だ!」と考え、大きな不安を招くよりも、「もし落とされたとしても、それは長い目で見れば他にもっと進むべき道があるということだ」という考え方で臨む方が、不安を和らげることができ、結果として高いパフォーマンスを発揮することができるでしょう。

うまくいかなかった場合でもその状況を受け入れる覚悟を決めるうえでは、こういった考え方をすることが効果的です。そして、不安を和らげたうえで最大のパフォーマンスが発揮できるようにベストを尽くすことが大事です。 

このように不安と向き合っていただけると、不安は少しずつ和らいでいきます。
不安から逃げるのではなく、不安と向き合い、うまく付き合っていくことで、転職活動や就職活動においても悔いなくベストを尽くせることでしょう。